11月3日としまセンタースクエアで行われたレッツ!終活〜老いも若きも全員集合〜 で基調講演「終活 今すぐ始めるココロとモノの整理術」を聞いてきました。講演概要は以下の通りです。
基調講演 ”終活”今すぐ始めるココロとモノの整理術
遺品整理や福祉住環境整理の現場経験をもとに、心と物の整理を判断力・体力のあるうちに始める重要性を解説した石見良教氏の講演です。身の回りの物を減らす実践方法に加え、認知症や介護、災害、葬儀、お墓、財産、相続、デジタル遺品など、将来の「もしも」に備える方法が扱われました。終活を人生の終わりへの準備だけでなく、現在の暮らしを安全で快適にし、本人と家族の負担を軽くする取り組みとして捉えることが促されました。
主なポイントと重要事項
1. 生前整理は、判断力と体力があるうちに始める
- 整理作業は本人が生きていて、自分で判断し動ける間にしか進められません。介護が必要になったり、認知症などで判断能力が低下したりしてからでは、本人の希望に沿った整理が難しくなります。
- 遺品整理の現場では、一般家庭に残される荷物量について、戸建てで約5〜6トン、集合住宅で約3〜4トンという目安が示されました。また別の説明では、亡くなるときに平均約3トン分の物が残るとされ、最終的な目標として約1.5トンまで減らすことが提案されました。講演者が示した目安であり、説明箇所により現状の荷物量の数値には幅があります。
- 遺族に片付けの負担を残さないためにも、残す物の量を意識して少しずつ見直すことが大切です。
2. 認知症と住環境の悪化に早く気づく
- 遺品整理だけでなく、いわゆるゴミ屋敷状態になった住居を整える「福祉住環境整理」の依頼が増えていると説明されました。
- 一人暮らしの高齢者が認知症を発症すると、ごみの分別や排出が難しくなり、1年半〜3年ほどで足の踏み場がなくなるケースが多いとのことです。不衛生な住環境での転倒や救急搬送をきっかけに認知症が判明する例もあり、在宅医療や居宅介護へ移行しようとしても、介護ベッドを搬入できないことが問題になります。
- 講演では、認知症高齢者を約460万〜471万人、軽度認知障害(MCI)の人を約400万〜564万人とする数値が示され、両者を合わせると約1,000万人に迫る規模と説明されました。単身世帯の増加もあり、住環境悪化のリスクへの早期対応が必要です。
- 自力で片付けやごみ出しが難しくなった場合は放置せず、専門業者や公的支援窓口へ相談すること、地域で異変に気づいた場合には介護・福祉の関係機関へ早めに情報共有することが勧められました。
3. 終活では「今の活動」だけでなく心の整理や支援を受ける可能性も考える
- 健康、生きがい、趣味、身辺整理、資産の維持などは考えやすい一方、自分の最期や、介護・認知症などで支援を受ける可能性は後回しにされがちです。講演者は、自分の心の整理を大切な課題として挙げました。
- 講演者は、2018年ごろの冬に転倒して大腿骨頸部を骨折し、入院と厳しいリハビリを経験したと振り返りました。元気な人にも、突然介護や支援が必要になる可能性があるため、早いうちから想定しておくべきだと述べました。
- 地域の相談先として地域包括支援センターが紹介され、豊島区では「高齢者総合相談センター」と呼ばれるなど、名称は自治体によって異なると説明されました。本人だけでなく、家族や次世代にも相談先を伝えておくことが大切です。
- 介護を担う人、利用するサービス、介護保険適用後の費用、介護ベッドや訪問介護にかかる費用なども、家族と事前に確認するよう勧められました。講演者は、2026年に大腿骨を骨折して自宅に戻れなくなった父親を、近くに住む兄が支援している例も紹介しました。
- 認知症などによる判断能力の低下に備え、成年後見制度を含む支援の仕組みを学ぶことも提案されました。後見を必要とする人が多い一方で担い手が不足しているとの説明があり、社会福祉協議会などの養成講座が学びの機会として紹介されました。
4. 「整理」「整頓・収納」「片付け」を区別する
- 整理は、家の中の物を確認し、必要・不要を判断して、不要な物を家の外へ出すことです。
- 整頓・収納は、整理後に残った必要な物を使いやすく配置することです。整理が終わる前に収納を始めないよう説明されました。
- 片付けは、使った物を元の場所に戻し、整った状態を保つ作業です。
- 整理ができない傾向として、「忙しい」と先送りする現実逃避タイプ、物にまつわる思い出に浸って作業が止まる過去執着タイプ、「いつか使うかも」と手放せないタイプが挙げられました。特に「ひょっとしていつか使う」という考えは整理を妨げやすいと指摘されました。
- 物は結婚や子どもの誕生などを機に増え、50代後半から60代ごろに最も多くなる傾向があると説明されました。20〜50代は趣味や家族・子どもの物を増やしながら時間がないと整理を後回しにしがちです。60代では子どもの独立後も荷物が実家に残り、70〜90代では長年整理をしていないため方法が分からない、配偶者の遺品整理や自身の体力低下でさらに難しくなる、といった課題が語られました。
- 整理は、過去のすっきりした空間を取り戻す「時間を取り戻す作業」とも表現されました。物を減らすことで掃除の手間が減るほか、介護ベッドの設置場所を確保し、避難経路を確保し、転倒や地震時の危険を減らす効果もあります。階段や出入口に物を置かないこと、大型家具(タンス・本棚・食器棚)に突っ張り棒などの転倒防止策を施すことが勧められました。
- 最初から家全体に取り組むのではなく、冷蔵庫の中など狭い場所から始める方法が提案されました。物置や高所の収納も含めて家の中の物を把握し、家族の物を処分する際には無断で進めず、本人と相談することが重要です。
- 無料の試供品、アメニティ、ポケットティッシュ、小銭、読み返さない本なども、本当に必要かを考えて家に入れる量を抑えるよう勧められました。買った物を手元に置き続けたい気持ちを見直し、「断捨離」と関連づけた、必要以上に所有しない姿勢も紹介されました。
- 子どもが独立した後に実家に残した荷物は、親にとって不要な物になっている場合があります。本人に連絡して引き取ってもらう、遠方なら受取人払いで送るといった対応が提案されました。
5. 写真・思い出の品は残し方や行き先を考える
- 写真アルバムを長く見返していない場合、残したい写真をスマートフォンで撮影してデータ化し、見返せるようにする方法が紹介されました。元の写真を手放しにくい人には、供養祭などを利用する選択肢も示されました。
- 遺影写真は家族が選ぶと本人の希望と異なることがあるため、元気なうちに本人が選んでおくことが望ましいとされました。講演者は、家族写真を撮影した機会に父親の遺影写真も撮り、本人が気に入った写真を準備できた経験を話しました。
- はがきや手紙もデジタル化を検討できます。ビデオテープやカセットテープなど再生する機会のない媒体は処分を検討し、レコードなど価値のある物は買取店への持ち込みや譲渡を考える方法が紹介されました。
- 引き出物などの贈答品は、しまい込むだけでなく、実際に使うか、必要とする人に譲ることが勧められました。物は活用してこそ価値が生まれるという考えが示されました。
- 講演の終盤では請求書・領収書類にも言及されましたが、記録が説明の途中で終わっているため、保存期間や処分方法の詳細は確認できません。
6. 葬儀・お墓・財産・デジタル遺品を具体的に把握する
- 葬儀費用は曖昧な印象で判断せず、2〜3社から正式な見積もりを取って適正価格を把握することが勧められました。会場の棺の展示などを活用して事前に体験・相談することも提案されました。
- 高級布貼り棺などの仕入れ価格は2万円前後で、ネット通販でも手頃に入手できるとの説明がありました。棺や葬儀の費用について、思い込みによる過大評価を避けるよう促されました。
- 樹木葬、海洋葬、宇宙葬などお墓の選択肢が多様化する一方、承継者がいない場合の墓じまいでは、離檀料などのトラブルを避けるため、行政書士などの士業・専門家へ相談することが勧められました。
- スマートフォンやパソコンのパスコード解除を専門業者に依頼すると、1件あたり5万〜10万円かかる場合があると説明されました。ネット銀行、ネット証券、公共料金、動画サブスクリプションなどの契約先・ID・パスワードを一覧にし、信頼できる家族など1人に共有しておくことで、死後の引き落とし継続や解除費用の問題を防ぎやすくなります。
- プラスの財産だけでなく、ローンなどのマイナスの財産も洗い出すことが重要です。家系図を書き出して相続関係を見える化し、相続争いを防ぐことも提案されました。
- 生命保険金は申請主義のため、保険証書の存在を家族が把握していないと請求漏れにつながります。加入中の保険証書を確認し、家族に保管場所を伝えておく必要があります。
- 貴重品を缶や本棚など意外な場所にしまうことがあります。認知症などで保管場所を思い出せなくなる可能性を考え、貴重品を不用意に隠さず、信頼できる人に保管場所を伝えておくよう勧められました。
- 豊島区版エンディングノート「終活安心ノート」は、一日ですべて書き上げようとせず、記入できる項目から少しずつ埋める方法が提案されました。自分の希望や資産、葬儀などについて、家族と共有できる形にしておくことも勧められました。
講演は盛況で予約で会場が満席でした。参加者の多くの方はこの講演内容を必要とするベテランの方々(生前整理自体は年齢問わず必要です)でメモをとったり、頷いたり大変熱心に聴き入っていました。講師の石見良教氏は聴衆の関心を引き込む巧みな話術でした。深刻な内容であるテーマを笑いも交えて参加者に伝えておられました。
レッツ!終活は基調講演以外にも①エンディングノート②葬儀③相続税の講座が行われました。
展示・相談ブース、情報コーナーでは葬儀・お墓・相続・遺言・おひとりさま支援・成年後見制度などの情報提供が行われました。
イベント名:レッツ!終活〜老いも若きも全員集合〜
日時:2026年11月3日(火・祝)10:00〜15:30
会場:豊島区役所本庁舎1Fとしまセンタースクエア


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