
7月12日文京区千石図書館で「尿路結石について〜おまかせあれ!最先端の技術で粉砕、そして再発予防」を聴講してきました。今回はいつもの大塚病院の地下1階でなく千石図書館での開催です。講師は泌尿器科・尿路結石センターの高沢亮治先生です。40席の会場は予約で一杯でした。講義概要は以下の通りです。
1. 尿路結石症の歴史と疫学
- 歴史的背景: 尿路結石は有史以来の病気であり、紀元前15世紀のエジプトに治療記録が存在する。ニュートンやナポレオンも罹患したと言われ、外科手術の歴史と密接に関連している。「砕石位」という体位も結石治療に由来する。
- 現代の疫学:
- 日本では10年に1度、全国的な疫学調査が行われている。2015年の調査では患者数の増加は頭打ちになったが、今後10年で高齢者の患者増が予測される。
- 結石世代: 特定の年代層(男性: 1954-1967年生まれ、女性: 1940-1955年生まれ)に患者が集中している。この世代の患者年齢層のピークは2005年から2015年にかけて10歳分ずれており、バブル期の豊かな食生活が影響した可能性が指摘されている。
2. 尿路結石の原因とリスク要因
- 基本的な形成プロセス: 腎臓内で尿が通過する壁に結晶の核ができ、それが成長・凝集して結石となる。完全なメカニズムは未解明。
- 解剖学的要因(高澤分類): 講師が提唱する腎臓の出口(腎盂)の形状分類。
- 1型 (シングルペルビス): ロート状(約6割)。石ができても比較的流れやすい。
- 2型 (バイペルビス): 二股状(約4割)。分岐部に石が留まりやすく、大きな腎臓結石に成長しやすい。
- 一般的なリスク要因:
- 食事内容: 動物性タンパク質、シュウ酸(たけのこ、チョコレート等)、プリン体(ビール、たらこ等)の過剰摂取や、塩分・カロリーの高い食事はリスクを高める。全体のバランスが重要。
- カルシウム: 日本人は摂取量が少ないため、むしろ摂取が推奨される。食事中のカルシウムは腸内でシュウ酸と結合し便として排出されるため、結石形成を抑制しうる。
- 抑制物質: クエン酸(レモン等)は尿をアルカリ化し、結石を抑制する。
- 男女比: 若年層では男性に多いが、女性は閉経後に女性ホルモンの予防効果が失われ、患者数が急増し男女比はほぼ1対1になる。
- 家族歴: 遺伝的素因や共通の食生活が関与。
- その他: 長期臥床、尿路感染、特定の薬剤(活性型ビタミンD製剤、ステロイド)、副甲状腺機能亢進症などもリスクを高める。再発予防には術後の栄養指導(メンテナンス)が重要。
3. 尿路結石の治療法と技術革新
- 治療法の変遷: かつて主流だった体外衝撃波砕石術(ESWL)は、2016年に内視鏡手術(TUL)に件数で逆転された。背景には内視鏡の細径化とレーザー技術の進歩がある。
- 体外衝撃波砕石術(ESWL):
- 概要: 体外から衝撃波を当てて結石を砕く。無麻酔・低侵襲で外来治療が可能。
- 短所: 大きな石や硬い石には不向き。破砕片が残存し再発の原因になることがある。腎臓へのダメージリスクもあるため、実施施設は集約化傾向にある。
- 内視鏡手術(TUL/f-TUL):
- 概要: 尿道から細い内視鏡を挿入し、直接結石を見ながらレーザーで破砕・回収する。確実性が高く、現在主流となっている。
- 長所: 結石の大きさや成分に左右されにくい。破片を回収するため再発率が低い。
- 短所: 入院と麻酔が必要。尿管損傷のリスクがゼロではない。
- 経皮的腎砕石術(PCNL): 腰から腎臓に穴を開け、大きな結石(サンゴ状結石など)を摘出する。尿道からのアプローチ(ECIRS)と併用することもある。
- 技術革新:
- 内視鏡: 高価で繊細だったが、単回使用(使い捨て)のビデオスコープが登場・普及し、コストも低下。中国メーカーの参入も進んでいる。
- レーザー技術: 主にホルミウムヤグレーザーが使用される。レーザー照射で生じる気泡(バブル)が結石を化学的に分解する「モーゼスエフェクト」が破砕の原理。パルス制御により、大きく割る(ショートパルス)か、砂状にする(ロングパルス/ダスティング)かを選択可能。
- 周辺機器: 術中の水流を管理するシースや自動灌流システムの導入により、敗血症リスクが低減。
4. 合併症、病院経営、将来展望
- 合併症と発生率: 2017-2019年の全国82施設のデータ(14,120症例)では、尿管穿孔1.3%、尿管狭窄0.8%、敗血症性ショック0.8%、死亡0.04%などが報告されている。結石内部の細菌による術後敗血症が最も注意すべき合併症の一つ。
- 病院経営の課題: 手術に用いる機器や材料費は高騰しているが、診療報酬点数は据え置かれており、高品質な医療を提供するほど赤字になる構造的問題がある。
- 将来展望:
- ロボット支援手術: ダヴィンチや国産の「ヒノトリ」といった手術支援ロボットの導入が進むが、費用対効果が課題。
- 遠隔操作: 医療従事者の被曝を避け、体力的負担を軽減するための遠隔操作型機器の開発が期待される。
- 継続的改善: 治療技術は年々着実に進歩しており、10年単位で見ると大幅な向上が見られる。

尿路結石は自分自身も罹患したことがあり、なんと表現していいのかわからない激痛を経験しました。先生がおっしゃるには医学分野でも尿路結石手術は進歩しており、実際に使用する内視鏡なども見せていただきました。またいつもの講義以上に自身の経験に基づいた質問も多く寄せられました。
日時:2026年7月12日 14時〜15時
会場:千石図書館(文京区千石1−25−3)



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